北九州地域の裁判所の本庁昇格運動について
当部会(福岡県弁護士会北九州部会)では「本庁昇格対策委員会」を設置して北九州地域の裁判所の本庁昇格を目指して活動していますが、裁判所の「昇格」とは「何のこと?」と思われる方も多いと思いますので、以下のとおり、ご紹介したいと思います。
1 本庁昇格運動とは?
北九州地域(北九州市、中間市、遠賀郡、行橋市、京都郡、豊前市、築上郡)には、次の7つの裁判所があります。
・福岡地方裁判所小倉支部、行橋支部
・福岡家庭裁判所小倉支部、行橋支部
・小倉簡易裁判所、折尾簡易裁判所、行橋簡易裁判所
本庁昇格運動とは、これらの7つの裁判所のうち、福岡地方裁判所小倉支部と福岡家庭裁判所小倉支部(併せて福岡地方・家庭裁判所小倉支部)を「本庁裁判所」である北九州地方裁判所と北九州家庭裁判所(併せて北九州地方・家庭裁判所)に昇格させることを目指している運動です。
2 なぜ、本庁昇格が必要なの?
本庁昇格運動と聞いても「どうして、支部の裁判所ではダメなの?」と疑問を持たれる方も多いかと思います(そもそも小倉の裁判所が「支部裁判所」であることを知らなかった方も多いかと思います)ので、ご説明します。
⑴ 本庁裁判所と同程度の規模があります!
現在の福岡地方・家庭裁判所小倉支部(以下、「小倉支部」)は、140万の人口を有する北九州地域を管轄し、新規取扱事件数としても、九州の裁判所の中では2位、全国の裁判所の中でも15位の件数を処理しており、他県の本庁裁判所と同程度の規模を有していますので、本庁裁判所に昇格するに相応しい物的・人的な能力を十分に備えています。
⑵ 支部裁判所では取り扱えない事件があります!
支部裁判所では、少額の民事事件を担当する簡易裁判所の判決に対する「不服申立(控訴)事件」が取り扱えませんし、行政庁による公権力の行使の取消しを求める訴訟などの「行政事件」も取り扱えません。
そのため、現状では、北九州地域の方が上記事件の裁判を求めるには福岡市にある福岡地方裁判所にまで出向く必要があるため、地理的な問題や費用の問題が上記訴訟手続の利用を阻害する要因の一つとなっています。
⑶ 支部裁判所では裁判所の機能が不十分です!
支部裁判所では、裁判所としても独自の管理機能(人事面や会計面)を有しておらず、また、市民の意見を反映させるための地方裁判所委員会も存在しないため、北九州地域の実情に見合った裁判所の設備・機能が十分に整備されないという問題もあります。
3 本庁昇格に向けた取り組み
この本庁昇格運動の特徴は、弁護士会だけでなく、北九州地域の地方公共団体や地方議員・国会議員、商工会議所などの各種団体が一致団結して活動している点にあります。以下、活動内容をご紹介します。
⑴ 北九州地方・家庭裁判所本庁昇格期成会の結成
小倉支部の本庁昇格に向けては、当部会の他、北九州市をはじめとする地方公共団体や商工会議所などの各種団体も参加する「北九州地方・家庭裁判所本庁昇格期成会」が結成され、北九州市長には本庁昇格期成会の会長として本庁昇格運動を牽引していただいています。
また、北九州地域選出の国会議員によって議員連盟も結成されて本庁昇格運動を強力にバックアップしていただいております。
まさに行政・政界・財界(もちろん弁護士会も)が一丸となり、北九州地域の司法サービスの基盤である裁判所を本庁裁判所に昇格させて強化することの重要性を共通の認識として有し、一致団結して行動しているのです。
⑵ 主な活動内容
本庁昇格期成会では、毎年上京し、法務省や最高裁判所に小倉支部を本庁裁判所に昇格させる陳情を行っています。
平成25年10月23日の九州弁護士会連合会の定期大会においては、小倉支部について独立した本庁裁判所とすることを求める決議がなされています。
平成28年2月25日には、国会の予算委員会において、小倉支部の本庁裁判所への昇格についての質疑が行われました。
令和元年8月22日には、日本弁護士連合会の地域司法キャラバンにおいて、地域司法の基盤整備に関する議論が行われ、小倉支部の本庁裁判所への昇格についての議論が交わされました。
⑶ これまでの活動の成果
残念ながら、現在に至るまで小倉支部の本庁昇格は実現していませんが、この運動によって最高裁判所や法務省に小倉支部が重要な支部であることを訴求し続けてきた結果、小倉支部では全国の他の支部裁判所に先駆けて裁判員裁判や労働審判が実施されるに至りました。
4 最後に
小倉支部の本庁昇格運動の目的は、司法サービスの基礎である裁判所を本庁裁判所に昇格させることで機能的に強化し、北九州地域の実情に見合った十分な司法サービスを受けられるようにすることです。
私達は、本庁裁判所への昇格は北九州地域の潜在力を発揮する一助になるものと信じ、今後も本庁昇格運動を続けていきますので、市民の皆様方にも本庁昇格運動をご支援くださいますよう、よろしくお願いします。