サービス残業?
本コラムでは労働問題について順次ご紹介していますが、今回は、賃金の未払いの中でも特に問題となる「サービス残業」についてご紹介します。
「賃金」とは、名目を問わず、会社(使用者)から従業員(労働者)に労働の対償(対価)として支払われるものです(例えば、基本給や残業手当など)。
以下、賃金についての制度や情報をいくつかご紹介します。
1 労働時間と賃金
会社(使用者)から従業員(労働者)に給与が支払われないということは、会社の経営状態がかなり悪化している場合(倒産間近など)によく見られます。他方で、残業代については、会社(使用者)がきちんとした計算方法を十分に理解していないことから、会社の経営状態とは関係なく、適切な金額が支払われていないことも多いのです。
残業代は、所定労働時間(会社と契約している労働時間)を超える労働に対して支払われます。また、法律 (労働基準法)は、労働者が1日あたり働く時間の上限を決めていて、それを「法定労働時間」といいます。「法定労働時間」は、1日8時間、1週40時間 (労働基準法32条)とされていますので、変形労働時間制などの例外的な場合を除いて、この時間を越える労働に対しても残業代が支払われる必要があります。
2 残業等に対する割増賃金
会社は、法定労働時間を超える残業や休日労働に対しては、単なる残業代だけでなく割増賃金を支払う必要があります。残業等をした従業員(労働者)は、会社(使用者)に対し、
- 法定労働時間を超える「残業」については、時間あたり賃金の25%以上の割増賃金
- 労働が深夜22時から翌朝5時までに及んだときは「深夜労働」として、時間あたり賃金の25%以上の割増賃金
- 「休日労働」に対しては、時間あたり賃金の35%以上の割増賃金
をそれぞれ請求することができます。
また、上記の1から3は重複して加算される場合もあります。例えば、残業(25%)かつ深夜労働(25%)であれば、50%以上の割増賃金となります。
3 サービス残業
会社(使用者)からの要求で従業員(労働者)が残業をしているのに、会社(使用者)から残業代をつけてもらえない「サービス残業」などと呼ばれるものがあります。従業員(労働者)は、このような残業自体を断ってもよいのですが、社内の立場からはなかなか断りづらいかもしれません。
しかし、サービス残業というのは、会社(使用者)が本来支払わなければいけない残業代の支払いを怠っているだけであり、会社(使用者)による債務(労働(雇用)契約における賃金支払義務)の不履行として、残業などをした場合には法的には残業代を請求することができるのです。
4 残業代の不払いへの対処方法
既にご紹介したように「サービス残業」と呼ばれるものであっても、従業員(労働者)は労働をしているのですから、会社(使用者)にはその対価として残業代を支払う義務があります。しかし、残業代を払ってくれない会社(使用者)に対しては、どのように残業代を請求したら良いのでしょうか。
残業代を請求する際に最も重要なのは「残業時間の記録」です。例えば、実労働時間に合わせてタイムカードを打刻できている場合であれば、そのタイムカード を基に残業時間を計算して残業代を計算することも容易でしょう。では、会社(使用者)から「残業をつけるな」との指導を受けていたりした場合はどうでしょうか。
この場合でも、出退勤の時刻を記載した業務日報、電子メールの送受信時刻やパソコンの利用時刻などの記録、従業員(労働者)本人が作成した勤務メモなどを保管しておくと、これらの資料を基に残業時間を計算することができます。そして、このような資料でも、後に裁判で残業代を請求する場合には、一定の証明力があると考えられています。
5 最後に
残業代等については、会社(使用者)に十分な知識がなかったり、労働法制の考え方とちがう運用をしている会社(使用者)も多いと考えられます。
例えば、月給制の会社において、入社時に「基本給に残業代が入っているから、残業はつきませんよ」との説明を受けたり、店長などの役職についている場合に 「管理職だから、残業代はありません」と説明されることがあります。しかし、これらの場合であっても残業代の請求ができるケースが少なくありません。
日々、仕事をしていく中で、残業代等について、①請求することができるのか、②どれくらいの金額になるのか、③どのような手続で請求すれば良いのかなど、疑問に思われる方も多いと思います。
そのような場合、法律相談センターにて弁護士にご相談いただくことができます。労働問題に関する労働者の方々からの相談は無料となっています。個々の事情に応じて適切なアドバイスをご提供していますので、是非ご活用ください。