犯罪被害者支援制度
普通に暮らしていた善良な市民が、何の非もないのに犯罪の被害にあい、自分や大切な家族の生命を奪われたり、心身に大きな傷を負ってしまうなどして、それ までの平穏な日常生活が一変してしまうことがあります。犯罪の被害にあわれた方は、犯罪そのものによって甚大な被害を受けるだけでなく、今後の生活の不安 や、加害者に対する恐怖心などによって、犯罪行為から時間が経っても悩まされ続けることが少なくありません。
犯罪被害者支援制度は、弁護士が被害にあわれた方の不安や悩みをお聞きし、他の機関との連携も考えながら支援を行う制度です。
はじめて相談に来られた被害にあわれた方から、よくお聞きする言葉があります。「弁護士って、犯罪者の味方だと思っていました・・・。」確かに、テレビや新聞では刑事事件の被告人(被疑者)を弁護している弁護士の姿が取り上げられることが多いため、一般の方にはそのようなイメージが強く、犯罪の被害にあわれても弁護士に相談しようとは思い付かないのかもしれません。 しかし、弁護士は、刑事弁護だけでなく、交通事故や犯罪の被害にあわれた方の代理人として、加害者に対して治療費や慰謝料といった損害賠償の請求をするなど、民事事件の場でも広く活動していますので、安心してご相談いただきたいと思います。
また、犯罪被害にあわれた方の中には、加害者に対する刑事裁判手続の流れなどがよく分からないため不安を抱えていたり、新聞などで報道されてマスコミに追いかけられるのではないかと心配されたりする方もいらっしゃいます。そのような不安を解消すべく、犯罪被害者支援制度の中には、被害にあわれた方が刑事裁判手続に参加される場合に、弁護士が代理人として対応する制度もありますので、犯罪の被害にあわれても一人で悩まずに気軽に弁護士にご相談いただきたいと思います。
最後に、犯罪被害者支援の場面で活躍している弁護士の事例を紹介します。
犯罪の被害にあわれた方のために、国は一定の給付を行う制度を設けています。北九州市内で発生したある刑事事件に関して、弁護士が被害者の代理人としてこの給付金を請求したところ、国は「請求手続の期限が過ぎている」という理由で給付を行いませんでした。
しかし、この事案では、そもそも国が主張する期間内に給付金を請求することが無理であったと思われるものでした。このため、この弁護士は、やむなく給付金の支払を求めて裁判を起こしました。この訴訟は困難を極めましたが、担当した弁護士は、被害にあわれた方からの「そうやって頑張ってくれているだけでうれしい」という言葉に励まされながら、約5年にわたる訴訟を経て、給付金の支給を勝ち取ることができました。
必ずしもこの事例のように、いつも被害にあわれた方にとって良い結果が残せるとは限りません。しかし、どのような事案であっても、弁護士は「被害にあわれた方に寄り添うことで、被害にあわれた方が少しでも笑顔になれるかもしれない」と自分に言い聞かせながら、被害者支援に取り組んでいるのです。