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預貯金の相続について(判例変更)

 

1 62年ぶりの判例変更!

  複数の相続人がいる普通預金の取扱いについて、平成28年12月19日、最高裁判所が今までとは異なる判断をしました。
 以前の最高裁判所は、銀行の普通口座にある預金について、分割が可能な金銭債権であることから、相続人全員による「遺産分割」協議を経なくても、相続開始(被相続人の死亡)と同時に各相続人の法定相続分に応じて当然に分割取得され、各相続人は分割取得した限度で普通預金を単独で払戻請求できるとの判断を示していました(最高裁昭和29年4月8日判決)。
 ところが、最高裁判所は、今回、昭和29年の判決を62年ぶりに変更し、「預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解する」との判断を示しました(最高裁平成28年12月19日決定)。
 では、今回の最高裁判所の判断は、具体的にはどのような内容で、今後の預貯金の相続手続にどのような影響を与えることになるのでしょうか。

 

2 そもそも「遺産分割」って何?

  亡くなられた方の財産は、故人の配偶者や子、親、兄弟などが相続人として引き継ぐことになりますが、故人が遺言書を残されていない場合には、その財産は原則として相続人全員が共同所有(共有)することになります。
 相続した財産を各相続人に具体的に分割せずに共有のままにしておくことも可能ですが、共有のままでは処分が困難ですし、時の経過により次の相続が発生して権利者が増えるなど、後のトラブルの原因となりかねません。
 そこで、共有状態にある相続財産を各相続人の単独所有とするために、相続人全員で話し合って具体的な取得分を決めるのが「遺産分割」です。

 

3 「遺産分割」の対象になる財産?

  上で説明したとおり、共有の相続財産を各相続人の単独所有にするための話し合いが遺産分割ですので、遺産分割の対象になる財産とは相続開始時に共有財産となる財産をいいます(例えば、具体的な分割が困難な「不動産」など)。
 その反対に、遺産分割の対象にならない財産とは、共有とならない相続財産、つまり相続開始時に直ちに各相続人の単独所有となる財産をいいます(例えば、具体的な分割行使も容易な「損害賠償請求権」など)。

 

4 今回の最高裁判所の判断の意味は?

  今回、最高裁判所は、亡くなられた方の普通預金について、従前の「遺産分割の対象ではない」という立場から、正反対の「遺産分割の対象である」という立場に変わりました。
 つまり、亡くなられた方の普通預金については、今までは「相続人間で話し合いをしなくとも法律で定められた割合(相続分)に応じて相続人が当然に分割する」とされていたものが、これからは「相続人間で話し合いをしないと当然には分割されませんよ」ということになったのです。
 最高裁判所がこのような判断を示した理由としては、①預貯金は現金と同様に評価額の算定が容易であることから、具体的な遺産分割の方法を定める際に、相続人間の実質的公平を図るうえでの調整に資するという事情に加え、②預貯金は、解約されない限り相続開始後も残高が変動し得るため、必ずしも相続開始時に金額が確定するものではないという預貯金一般の性格も考慮されたものと解されます。

 

5 私たちの生活にどのように影響するの?

  これまで、預貯金の相続人は、法律上は、遺産分割を経なくとも、銀行に対して単独で自己の相続分に応じた預貯金の払い戻しを請求することが可能でしたが、もう単独での払戻し請求はできません。
 なお、今回の最高裁判所の判断の対象は普通預金と通常貯金、定期貯金だけでしたが、その後、最高裁判所は定期預金と定期積金についても同様の判断を示しました(最高裁平成29年4月6日判決)。

 

6 終わりに

  以上のとおり、亡くなられた方の預貯金を相続人が払戻すためには相続人全員の合意(遺産分割)が必要となりますが、「争族」(相続)と揶揄されるように、各相続人の主張が異なって争いとなり、遺産分割の協議は往々にしてまとまらないことが多いものです。
 このような事態を防ぐためにも、遺言書を作成し、無用な争いを生じさせないことが重要です。
 遺言や相続のことで深刻な「争族」(相続)に発展することがないように、先ずは法律相談センターでご相談ください。

 

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